<特徴>
当科では腎臓、副腎、膀胱、前立腺、精巣などの泌尿器系臓器に生じた癌の診療から、尿路結石症、前立腺肥大症、陰嚢疾患、尿路感染症、小児泌尿器科疾患などの良性疾患、末期腎不全に対する血液透析など腎不全診療を行っています。開腹手術や腹腔鏡下手術、経尿道的手術に対応しており、特に前立腺肥大症に対するホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)・経尿道的水蒸気治療(WAVE)・経尿道的前立腺尿道吊り上げ術(PUL)、尿路結石に対するレーザー治療に力を注いでいます。当科では、PULについては東北6県で最初、WAVEについては県内で最初に技術認定を取得しており、ご高齢で合併症のある方にも優しい治療が可能な複数の低侵襲治療(MIST: Minimally invasive surgical therapy)と、他施設では治療困難な病状でも対応可能なHoLEPを行うことで幅広い病状に対応した診療体制を取っています。2018年よりMOSES systemTMを実装したホルミウムレーザーLumenis pulse 120Hにより、高効率な結石治療やMoses HoLEPなど先進的な治療を行っています。また、当院は前立腺癌に対する強度変調放射線療法(IMRT)前に治療精度向上や放射線性合併症の予防のため、前立腺金マーカー留置術や放射線治療用吸収性組織スペーサー留置術を自科行っており、近隣の医療機関からご希望の患者様のご紹介もお受けしています。
<対象となる疾患>
前立腺肥大症、尿路結石症、腎癌、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、副腎腫瘍、尿路感染症、停留精巣、腎不全、シャント機能不全など。
<診療内容>
1 前立腺肥大症
高齢男性の排尿困難の多くは前立腺肥大症によるものです。前立腺超音波検査、排尿機能検査、前立腺癌のスクリーニング検査、内視鏡検査などで病状を正確に把握した後に、症状に応じて内服治療や手術療法をご提案させていただきます。前立腺体積や病状に応じてホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)・経尿道的水蒸気治療(WAVE)・経尿道的前立腺尿道吊上げ術(PUL)を選択できます。
HoLEPは従来の前立腺切除術と比較して出血が少なく体への負担が少ない上に治療効果が高く再発率が低い優れた術式ですが、熟練した技術が要求される手術でもあります。当院は豊富な手術経験を有した術者が執刀しており、MOSES systemによる高効率手術(MoLEP)により従来まで開腹手術が行われてきた前立腺体積の大きい方でも安全に手術可能となっています。2023年からは、Rezumシステムによる経尿道的水蒸気治療:Water Vapor Energy Therapy(WAVE Therapy)は前立腺中葉肥大を伴う80cm3以下の体積の方で、全身麻酔リスクのある方の低侵襲治療選択肢としています。UroLift2システムによる経尿道的前立腺吊り上げ術:Prostatic Urethral lift(PUL)は、前立腺中葉肥大を伴わない比較的体積の小さめの方で、全身麻酔リスクのある方の低侵襲治療選択肢としています。本邦で初めてPULの安全な術式提案について論文発表を行っています。
→論文
- Initial outcomes and surgical techniques of prostatic urethral lift for benign prostatic hyperplasia in Japan – Anan, Fujishima – 2024 – International Journal of Urology – Wiley Online Library
→プレスリリース1 - Efficacy and safety of prostatic urethral lift according to preoperative urinary retention and prostate volume: A Japanese real-world multicenter data- Anan, Fujishima – 2024 – International Journal of Urology – Wiley Online Library
→プレスリリース2 - Two cases of pelvic hematoma after prostatic urethral lift surgery – Fujishima – 2024 – IJU Case Reports – Wiley Online Library
- 前立腺肥大症治療のパラダイムシフト 前立腺吊り上げ術(UroLift2)のtips&tricks | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
- HoLEP関連情報
https://www.bostonscientific.com/jp-JP/health-conditions/bph-top/HoLEP/bph-01.html
2 腎癌/腎盂尿管癌
岩手県立病院では数少ない日本泌尿器科内視鏡・ロボティクス学会腹腔鏡技術認定医が在籍し、主に腎癌や腎盂尿管癌に対する腹腔鏡手術を行っています。腹腔鏡手術は体への負担が少なく術後の回復も早く、中程度までの病期の方に対する標準的な術式として普及しています。当院では2020年から3D内視鏡を使用した腹腔鏡手術を開始し、精度の高い安全な手術を行っています。
→論文
3 尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂癌、尿管癌)
膀胱癌は癌進行の程度によって治療方針が大きく変わります。早期癌は簡便な内視鏡手術のみで治すことができますが、癌が進行して大きくなってくると抗癌剤、放射線治療、開腹手術、苦痛緩和療法などのさまざまな方法を組み合わせる必要があり、治療期間も長くなります。磐井病院泌尿器科では、「最小の負担で最大の治療効果」をあげられるよう、さまざまな手術・治療法を駆使して治療に臨んでいます。膀胱癌に対する、第3世代光線力学診断用剤5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を用いた光線力学診断(photodynamic diagnosis: PDD)が、2017年に保険適用になり、当院でも2020年から標準的にPDDを用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術を行い、精度の高い手術治療を行っています。
抗癌剤治療についても、保険適応となっている新規薬剤やレジメンを積極的に採用しています。大学病院などの高次医療機関と連携し、必要時応じて患者さんの地元での治療継続も可能としております。
4 前立腺癌
当科では早期診断と早期癌に対する低侵襲な放射線治療に力を入れています。精度の高い早期診断のために、当院ではプロステートヘルスインデックス(phi)による評価を採用しており、前立腺針生検が必要な方を絞り込んで行っています。強度変調放射線療法(IMRT)の適応となった場合には、治療精度向上や放射線性合併症の予防のため、前立腺金マーカー留置術と放射線治療用吸収性組織スペーサー留置術を行っています。ロボット支援腹腔鏡下手術や粒子線治療が適応となる患者さんについては、必要に応じて近隣または県内外の各病院などをご紹介しています。そのほか新規ホルモン治療薬や抗癌剤治療にも対応しており、大学病院などの高次医療機関と連携し、必要時応じて患者さんの地元での治療継続も可能としております。当院では病状に応じて、前立腺癌の遺伝子検査であるBRCA1遺伝子・BRCA2遺伝子検査(BRACAnalysis診断システム)を行っており、変異があった場合の治療まで行っています。院内で開設している遺伝カウンセリング外来にて、ご家族のご相談にも対応しています。
5 尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石)
2018年よりMOSES systemTMを実装したホルミウムレーザーLumenisパルス120Hを用いた内視鏡手術を導入し、TULやPNLなどの標準的な内視鏡手術に加え、高難度な結石適用されるECIRS/TAP手術も行っています。
6 腎不全
2020年から末期腎不全患者さんの血液透析導入・管理、経皮的内シャント拡張術を行っています。血液浄化療法として免疫吸着療法、血漿交換療法にも対応しています。必須微量元素であるセレンの研究、治験等にも取り組んでいます。
→論文
- 透析患者におけるセレン欠乏症の臨床的意義 透析会誌54 (5): 191~201, 2021
- 透析患者におけるセレン欠乏症に関する診療指針 日本臨床栄養学会雑誌41(2): 182~205, 2019
<施設認定>
日本泌尿器科学会専門医教育施設